2008年03月31日

超小型基地局「フェムトセル」の規制緩和案へのパブリック・コメント

以前の投稿で、2月6日付けの総務省「フェムトセル基地局の活用に向けた電波法及び電気通信事業法関係法令に関する取扱方針(案)」に関する意見募集を取上げました。

そのパブリックコメントが3月14日に公開されました。



出されたコメントをジックリ読むと、各々の事業体の現状認識が良く分かって面白い。(ちょっと不謹慎か)
その中で「株式会社STNet」のコメントは非常に端的な表現で、固定ブロードバンドサービス事業者の立場ではありますが、問題・課題の全体像を示しているように思いました。


パブリック・コメントを要約すると、
(1)新たな利用形態に対する固定ブロードバンド回線への追加投資の負担をどうするか
(2)携帯電話の固定回線経由の通話品質をどう保つか(電波障害・干渉、通話品質基準、品質・障害の責任主体、ブロードバンドサービスへの品質影響度、協議の場)
(3)携帯電話だけでなく、PHSや今後の無線通信方式でも類似の法体系整備が必要
(4)固定ブロードバンド回線契約者以外の第三者活用(喫茶店など)で、ISPの契約約款を維持すると実質フェルトセル基地局は実現できない(させない)
(5)フェムトセル基地局の売切り制の実現にあたっては慎重な対応が必要で、改めて広く意見を求めた上で策定して欲しい
(6)緊急通報位置情報通知を確実に実施できる仕組みが不明確
(7)NTT東西・DOCOMO等への規制は、KDDI・ソフトバンクとの競争条件で不平等
といった所。



1.新たな利用形態に対する固定ブロードバンド回線への追加投資の負担

固定ブロードバンド回線事業者から見れば、追加投資が必要な事は目に見えている。負担するのは、携帯電話事業者なのか、固定ブロードバンド回線事業者なのか。固定ブロードバンド回線事業者だとすると、フェルトセル基地局利用者とそうでない人の不平等が生じる事になります。
類似の問題として、映像・動画がネットワークを流れるようになった事によるISP事業者の負担増という事がありますので、イメージが湧くと思います。

まずは携帯電話事業者と固定ブロードバンド回線事業者の協議の場が必要だとしています。



2.携帯電話の固定回線経由の通話品質

総務省の案では、「通話品質、接続品質、セキュリティ関連の機能として、・・・・、通常の基地局方式の携帯電話役務の場合と同等であることが求められる」となっているので、それを実現する技術的な課題が山積みといった所。固定回線系と携帯電話系を融合させるという割には、新しいコンセプトに対する基本的なベースが議論されていないという感じです。

また、品質といった場合には携帯電話系だけでなく、固定回線系の品質も考えなければならないという事や、導入時の協議の場と共に、障害時の対応体制も作っておく必要があると提案されています。



3.PHSや今後の無線通信方式での類似の法体系整備

フェルトセル基地局というコンセプトは、携帯電話だけではないというのは、言われてみればその通りです。「フェルトセル基地局」を一般的に考えれば、屋外での通信手段と宅内(建物内)での通信手段の融合というコンセプトになります。屋外での通信手段といえば携帯電話やデータ通信系、宅内での通信手段としては、固定電話・ブロードバンド回線系や無線LANもあります。理想としてはこれらが全て1つの機器で済ませられる事でしょう。

この理想を実現できるだけの法律体系にするのは、携帯電話で実現できれば(技術や費用などの問題は別にして)そう難しくも無さそうです。



4.固定ブロードバンド回線契約者以外の第三者活用

これは最終的には契約約款というよりも、1項の誰が費用負担をするかの問題であると思います。第三者に使わせる事業者とか・・・・・



5.フェムトセル基地局の売切り制の実現にあたっては慎重な対応

これは至極当然。高層ビルや地下街などの不感エリアの解消の為に、簡単な運用部分に限って回線事業者以外の人でもできるようにするのが第一で、売り切り制に持っていくのは上記の問題・課題を考えると、ステップが大きすぎる様に感じますがどうでしょうか?

簡単な運用部分に限って回線事業者以外の人でもできるようにするにも、
①何処までを「簡単な運用」とするか
②通話品質、携帯電話の品質基準を明確にする
③投資(回線設備、サービス)増の負担をどうするか
④緊急通報位置情報通知を確実に実施できる仕組みが不明確
等の問題を解決する必要があるようです。


そして、「売切り制の実現」にはもっと複雑な条件が加わる訳ですから、まず足元を固めるという意味で慎重に対応するのが良いのでしょう。



(7)はNTTグループが、もうソロソロ他社と同じ条件で競争させて・・・といっている訳で、本ブログの主旨を超えるので言及しない事にします。
ラベル:フェムトセル
posted by 鎌倉太郎 at 05:50| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | IT環境 | 更新情報をチェックする
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