展示品の発掘現場の名前として、「カノープス(Canopus)」、「ヘラクレイオン(Heracleion)」、「アレクサンドリア(Alexandria)」がでてきます。アレクサンドリアは良く知られていますが、他の2つは知りませんでした。但し、何れも古代エジプトの地名としてです。
古代エジプトの都市
上記の地図で各都市の位置が何れも海中を指しているのは、地震により海中に沈んでしまったから。その時期は、8世紀以降の貨幣が見つかっていないので、8世紀頃と考えられています。
まず、カノープスは、カノポスス勅令(The Canopus Decree)から立証されているプトレマイオス朝(Ptolemaic dynasty)におけるセラピス神殿を中心にした宗教的に重要な場所であるとか。
ヘラクレイオンは、プトレマイオス朝より前の末期王朝時代(前7~前4世紀)からの交易所があった所で、アレクサンドリアに交易を集中させるまでは地中海世界との玄関口。アメン神を祭るヘラクレス神殿が建っていたようです。
アレクサンドリアは、水没した所には宮殿や王宮専用の港、交易の埠頭などがあったといい、水没する以前の古代の岩礁を考慮すると、最良の自然港であったようです。
展示の方法は、発掘した場所別にその役割を示すテーマ毎に展示されていました。海底からの発掘という事で、その技術的な手法について説明・展示があったのも良かった。
展示作品の紹介(カノープス)
特に「王妃の像」は、殆ど等身大でとてもエロチック。「セラピス神の頭部」は、非エジプト人の髪型になっているのは、プトレマイオス朝がギリシャ系ファラオで、エジプトの文化・仕組みを取り込みながら、ギリシャの神とエジプトの神を融合していった典型例。
展示作品の紹介(ヘラクレイオン)
ハピ神・ファラオ像・王妃像はプトレマイオス朝の初期である為かエジプト伝統の形。ネクタネド1世のステラ(石碑)は、ヒエログリフがハッキリみえて最近製作されたような状態なのは、碑文の面が海底を向いていたので海水から保護されていたとの事。ヘラクレイオンの場所を特定する遺跡の近くから発見されたこのステラの碑文の地名から、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスが記録していた「トーニス」という地名とヘラクレイオンが同一のものである事が分かったとの事。
展示作品の紹介(アレクサンドリア)
女王クレオパトラのコイン(銅貨)が注目ですが、コインは2cmほどのもので美人(?)像は良く眼を凝らして見る必要があります・・・・・・
5mを超える立像から1cmほどのコイン、神殿への捧げ物から壺などの生活用品、コイン・計量おもり等の交易に関わる品々から兜・矢じり等の武器など、約450点にもなる幅広い展示品と整理された展示方法でこれまでになく充実した展示会であるように思います。