パナソニックが、モバイル機器用の小型燃料電池システムを実現し、試作品を九州で開催される展示会に参考出品するとの事。
「モバイル機器用直接メタノール型燃料電池システムの小型化を実現」【2008年10月20日】
ノートPC用途タイプでは、重量が約320g(燃料を除く)と従来のリチウムイオン・バッテリーとほぼ同等で、体積も270ccとノートPCに上手く収まってしまうようですネ。しかも燃料200ccあたり約20時間の駆動が可能との事ですから、技術的には実用化の段階に来ているようです。
ただ、燃料電池自動車が現時点では1台 1億円との話しや、家庭用の燃料電池コージェネレーションシステムでも1台 数百万円とされる価格という状況では、ノートPC用途タイプの価格も現状では手の出るレベルではないでしょう。
「世界最高(*)の発電効率と高い環境性能を実用商品化レベルで実現 - 発電効率、耐久性を実用商品化レベルに高めた家庭用燃料電池コージェネレーションシステムを開発」【2008年4月14日】
そうは言っても環境保護の必要性から期待されている「燃料電池」です。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によって調べてみました。
一般に「燃料電池(fuel cell)」は、水素などの燃料と酸素などの酸化剤を供給し続ける事で継続的に電力を取り出す事ができる化学電池ですが、
- 固体高分子形燃料電池 (PEFC)
室温動作が可能かつ小型軽量化が可能で、携帯機器、燃料電池自動車などで期待 - アルカリ電解質形燃料電池(AFC)
アポロ計画・スペースシャトルなどで「実用化」 - りん酸形燃料電池 (PAFC)
工場、ビルなどの需要設備向け - 溶融炭酸塩形燃料電池 (MCFC)
火力発電所の代替などの用途向け - 固体酸化物形燃料電池 (SOFC)
火力発電所の代替などの用途向け
今回のパナソニックがノートPC用途タイプとして試作した燃料電池は、直接メタノール燃料電池(direct methanol fuel cell、DMFC)というタイプで、固体高分子形燃料電池 (PEFC)のうちでメタノール燃料を用いる方式。メタノールから水素ガスを取り出す「改質器」を用いる「メタノール改質方式」と違って、メタノールを直接に反応させるので、「改質器」を用意しない分で効率は落ちるものの小型化が可能なのだそうです。
燃料電池では、上記のコストの他にも、メタノール燃料を使う場合は、
- メタノール自体が有毒物質
- 中間生成物としてホルムアルデヒドなどの有毒物質を微量ながら発生
更には、電解質の寿命、耐久性なども課題として挙げられています。
燃料電池自動車の場合は実用化の目処は見えませんが、家庭用の燃料電池コージェネレーションシステムでは、パナソニックが27年度には「60万円を達成したい」としているぐらいなので、数年の内には価格などの課題も現状のリチウムイオン・バッテリー並みになる事が期待できそうです。
ラベル:燃料電池